「しつけ」と「ハッピー」を繋ぐ 5

できることが増える=ハッピーに繋がる」という話で、毎回思い出すわんこがいます。

その子は、いわゆる「噛み犬」でした。
家族も噛むし、他人も噛みます。
まったく触れない子というわけではなかったんですが、いわゆる「油断していると」ばっくりいかれちゃう子でした。
あと、興奮しているときは、一切手を出せません。

飼い主さんは、色々なところで相談して、アドバイスをもらって、実践していたのですけれど、あまりうまくいっていませんでした。
ちょっとよくなったかな?と思ったら、またひどくなるということを繰り返していたんですね。

こういう子の場合、飼い主さんと一緒に「できること」が、とても少ないです。
まず、お散歩に行くことが一苦労です。

リードをつけたり、外したりという場面でも噛んでくることがあるので、リードは基本つけっぱなしです。
家族の誰かがオヤツで釣っておいて、その間に別の人が係留してあるリードを外し、そのままお散歩へ。
帰ってきても、なかなか足を拭せてくれないので、玄関に濡れたバスタオルを敷いて、その上を歩かせるということで、一応「足を拭いた」ことにしていました。
ご飯の食器も、イヌが見ている前で取ろうとすると噛まれるので、散歩中に取り替えます。

しかし、セッションを続けるうちに、段々と、本当に少しずつでしたけれど、イヌの様子が変わっていきました。
ちょっとずつ、ちょっとずつ、触れる回数、触れる場所が増えていきました。

人も噛むので、僕も最初のうちはまったく触りませんでしたし、触れませんでした。
でも、少しずつ僕も触れるようになっていきました。

この子にも、飼い主さんにもなるたけ負担のないように、ゆっくりじっくり、お付き合いをしていきました。
ゆっくり、ゆっくりではあるけれど、段々と「できること」が増えていきました。

リードの着脱も、足拭きも、色んなことが段々とできるようになっていったんです。

そして、当初は毎日のように誰かを噛みそうになっていた(飼い主さんが噛まれないような生活をしていたので、噛まれる回数自体は少なかったんです)のが、もう半年以上そういったそぶりが見えないとなったところで、一旦卒業となりました。

しばらく経ったある日、飼い主さんから電話があったんですね。
「うわ、ひょっとして、また噛みつきが復活したのか?」と、一瞬身構えたのを覚えています。
恐る恐る電話に出ると、飼い主さんから思いがけない一言を聞きました。

「初めて会ったおばあちゃんと、小さい男の子に、いっぱい撫でられたんです!」

恥ずかしながら、僕の第一声は「うそん!?」でした。
次が「え?ほんまですか!?まじで!?」でした。
飼い主さんも「ほんまほんま、まじで!」って、言ってたと思います。

いやもう、まさか初対面のお年寄りと小さい男の子に撫でられて噛まないようになるなんて。
そうなったらいいなぁという期待はありましたけど、まさか本当にそうなるなんて。

他人を噛む心配が本当になくなった今では、飼い主さんは色んなところに出かけているそうです。

以前は、一緒に出かけることなんて、まずありませんでした。

イヌは、ずっと部屋の隅で繋がれたままでした。

でも、できることが増えたおかげで、この家族の世界は、広がったんです

続きます

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hit1678 について

1978年9月17日生まれ。♂ Dog Life Design ocean style代表。 行動学(行動分析学)に基づいた、イヌの問題行動の改善が専門。 高校卒業後、警察犬訓練士に師事。その後、家庭犬の訓練に従事する。 現在は、問題行動の改善をメインとしつつ、しつけ、トレーニングではなく、「ヒトとイヌの暮らし」を支える「Dog Life Design」というコンセプトで、京阪神をメインに訪問セッションやセミナー講師を務める。 現在、立命館大学大学院応用人間科学研究科応用人間科学専攻(対人援助学領域)に通う社会人大学院生。
カテゴリー: イヌの「できる」を増やす, ベースアレンジ, 考え方のベースアレンジ タグ: , , , パーマリンク