イヌの「できる」を増やすために 4 その子に合ったしつけって?

「あなたのわんちゃんに合ったしつけ方」

これって、つまりどういうことなんだろう?って、考えてみたことってありますか?

前回の「できる工夫を見つける」について、もう少し掘り下げるというか、具体的にお伝えしてみます。

たとえば、「子犬をケージやサークルの中で過ごさせる」ということや、「噛まれて困るようなものは片付けておく」という「工夫」は、ほぼ一般的な考え方になってきていると思います。
そしてこれは、実は「できる工夫」なんですね。
大体の場合において、そういう工夫は「問題を予防する」みたいに言われたりすることが多いと思うんですが、その本質は「できるための工夫」なんです。

家の中でのイタズラが多いと。
その「予防」のために、ハウスやケージやサークルを活用する。
これは「家の中」という割と拾いスペースではなく、「サークルの中」という限られたスペース内でなら「大人しくできる」という工夫なんですね。

むしろ、そういう「大人しくできる工夫」という考えを持たずに、ただ単に「閉じ込めておく」だけでは、なかなかうまくいきません。
ハウスやケージを噛んで壊してしまったり、ずっと吠えていたりするなどの、新しい問題が起こることもあります。
ですから「大人しくできているとき」を狙って、「褒める」必要があります。
あるいは、「ハウスやケージの中で大人しくできる工夫」というものを、考える必要もあったりします。

「他犬に吠えて困る」という悩みや困りごとなんかで、「他のイヌと出会ったら食べ物を与える」という対応も、割かし一般的になってきました(この対応は「他犬に吠える」という行動の原因を見誤ると、まったく効果がなかったり、むしろひどくなったりするので、注意が必要です)。
大体は「イヌが来ると、食べ物がもらえる=いいことがあると、イヌに覚えさせましょう」みたいな形で説明されることが多いでしょうか。
確かにそういう側面もある対応です。
しかし、同時に「食べるという行動ができる工夫」でもあるんです。

 他犬が来る-吠える

こういう流れになっているわけですね。
それが、こうなります。

 他犬が来る-食べる

これも何度か書いていますが「食べる」も行動です。
つまり「吠える以外の行動(食べる)を引き出す」「吠える以外の行動(食べる)ができる」という工夫なわけです。

繰り返し書きますが、「他犬と出会ったら食べ物を与える」は、きちんと行動の原因のアタリをつけながらやっていかないと、ドツボにはまる可能性があります。
安易に真似をして「全然ダメじゃん」というプロも結構いるようですから、実践するのであれば、その辺のことをきちんとわかっている人にまずは相談しながら、できれば指導を受けながらやってください。

あるいは「他犬と出会ったら、オスワリをさせて、マテをかけましょう」というのも同じです。
「吠える以外の行動(オスワリ)を引き出す」「吠える以外の行動(オスワリ)ができる」ための工夫なんですね。

前回のエントリにも書きましたが、「リード」も「できる」の工夫です。
これも多分、多くの方が「イヌが勝手に走っていくのを防ぐためのもの」という風に、認識されているのではないでしょうか。
確かにそうなんですけれど、そういう認識だと「ゆったりとした散歩」は、ちょっと難しいかもしれません。
「リード」というのは、実は「飼い主の側にいることができる」ための工夫なんです。
首輪や、胴輪(ハーネス)、ジェントルリーダーなどのヘッドカラーも、全部同じ「飼い主の側にいることができる」ための工夫です。

こういう「工夫」の話をすると、こんな意見を聞くこともあります。

 「いやいや、そういう工夫をすればうまくいく?
  他のイヌで、そんなことをやってるのは見たことないですよ」

結構な割合で、多くの飼い主さんは「自分のイヌ」と「他のイヌ」を比べてしまう傾向があるようです。
まあ、ある程度はしょうがないとも思います。
思いますが、できればそこはぐっとこらえていただけるといいかなぁと思います。
自分の親が「〇〇君はちゃんとできるのに、どうしてお前はできないの」「〇〇君に比べてお前は」なんて言ってきたら、嫌ですよね?
イヌがそんなことをわかるかどうかというと、多分わかんないんですけど、あんまりフェアな感じはしませんよね。

もしも比べるとしたら、たったひとつだけ。
それは「昨日までのイヌと、今日のイヌ」です。

 「昨日までのあなたに比べて、今日のあなたはここが素晴らしい」

そんな風に、自分の愛犬のことを見ていただければと。

ちなみにこれは「褒める」ということにも通じる話です。
「他のイヌと比べてどうか」ではなく、「昨日までのあなたと比べてどうか」で、どんどん褒めて欲しいんですね。
つまり「他のイヌはそんなことやってない」なんてことは、考えないでいただきたい。
どこまでも「うちの子にとってどうか?」という風に、考えて欲しいんです。

で、冒頭の質問に戻るわけです。

 「あなたのわんちゃんに合ったしつけ方」

うっかりすると、ただの「売り文句」「謳い文句」になるだけだったりします。
「そう言っておけばそれらしく聞こえるし」的な。

でも、これをちゃんと考えてやっていくということは、どこまでも「この子にとってどうか?」ということを考え続けるということになると思います。
もう少しいえば「うちの子の嬉しい、楽しい、ハッピーってなに?」「うちの子の“できること”ってなに?」「うちの子は、どんな工夫があれば“できる”んだろう?」ということを、とことん考えるってことです。

もちろん、飼い主さんだけでは思いつかない、考えることが“できない”こともあると思います。
そんなときは、プロを呼んで一緒に考えてみられてはいかがでしょう?
きっと、しつけだったり、問題の改善だったり、あるいは「楽しい暮らし」に、一歩踏み出すことが“できる”ようになると思います。

他のイヌのことなんかどうでもよろしい。

他の飼い主のことだってどうでもよろしい。

よその家がなにをどうしてるとかどうでもよろしい。

あなたの子は、あなたの子です。

あなたは、あなたとあなたの子の「嬉しい、楽しい、ハッピー」だけを考えてください。

それを「できる」ようにする、「できる」ところまで持って行くお手伝いが、プロの仕事です。

続きます

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hit1678 について

1978年9月17日生まれ。♂ Dog Life Design ocean style代表。 行動学(行動分析学)に基づいた、イヌの問題行動の改善が専門。 高校卒業後、警察犬訓練士に師事。その後、家庭犬の訓練に従事する。 現在は、問題行動の改善をメインとしつつ、しつけ、トレーニングではなく、「ヒトとイヌの暮らし」を支える「Dog Life Design」というコンセプトで、京阪神をメインに訪問セッションやセミナー講師を務める。 現在、立命館大学大学院応用人間科学研究科応用人間科学専攻(対人援助学領域)に通う社会人大学院生。
カテゴリー: イヌの「できる」を増やす, ベースアレンジ, 考え方のベースアレンジ タグ: , , , パーマリンク