イヌの「できる」を増やす

前回のエントリでは、家の中で「落ち着きがない」「興奮しやすい」「暴れる」「イタズラをする」という子に対して有効な対応として、「寝た子は起こせ」作戦というものについて書きました。

多くの方は、そしてときにはプロでさえも「間違いを正す」「悪いことをしたら罰する」ということを、念頭に置いてしまいがちです。
しかしそれは「将棋をまったく知らない人にいきなり将棋をやらせて、間違ったら叱りつける」というのと、まったく同じことになってしまいます。
旧海軍大将の山本五十六が「人を動かす」ことについて残したとされる名言は、とても有名ですね。

 「やってみせ、言って聞かせて、させてみせ、褒めてやらねば人は動かじ」

これはそのまま、イヌのしつけ、トレーニングにも当てはまります。
大切なのは、まずは「正解を教える」ということ。
そして、この「正解を教える」というのは、どんなしつけであっても、どんなトレーニングであっても、どんな問題行動の改善であっても、すべての基本となる考え方です。
これは、これまでのエントリにも繰り返し書いてきていることですね。

 「正解を教えるって、じゃあどうすればいいの?」

そういう疑問が思い浮かんだかもしれません。

 「正解を教えるって言われてもさ、それができりゃ苦労はないんですよ。
  山本五十六?やってみせ、言って聞かせてって……
  イヌに言ったってわかんないから困ってるんですよ」

ごもっともなご意見でございます。
「正解を教える」とは、とどのつまりどういうことなのか?

「正解」を「教える」そして「褒める」わけです。
ということは、どうにかしてイヌに「正解となる行動」をやってもらわないといけません
 

「だからさ、その正解となる行動をやってくれないから困ってるんですよ。
  そもそもね、正解をやってくれないから……」

ええ、ええ、ごもっとも、ごもっともでございます。

「正解を教える」ためにできることは、結構色んなバリエーションがあります。
いわゆる「オヤツで誘導」なんていうのは、そのひとつですね。

他にもあるんです。
それが「いま、できることから積み上げる」です。

「正解を教える」とは、言い換えれば「イヌができることを増やす」とも言えます。

トイレのしつけでいえば「正解=トイレシーツの上で用を足す」ということになりますが、これってつまり「トイレシーツの上でできる回数を増やしていく」ということですよね。
お散歩のしつけでいえば「正解=飼い主の横について歩く」というものになるでしょうか。
そしてこれも、「飼い主の横について歩ける距離を延ばしていく」ということですよね。

どんなことでもそうですが、一見「抽象的なもの」を、こうやって「具体的なもの」にしていくことが大事です。
「行動の問題」「行動に関すること」については、抽象的なあれやこれやを「具体的な行動」に置き換えていくわけです。

じゃあ、前回のエントリの続き。
「家の中で落ち着きがない、興奮しやすい、イタズラする」といった「行動の問題」があるとして、それに対する「正解は?」というとなんでしょうか?
「暴れない」や「イタズラしない」は、行動ではないのでダメです。
あくまでも「~する」という風に、肯定形で考えていきます。
そうすると「オスワリする」「フセをする」みたいなものが出てきますね。
「ハウスの中で、大人しくする」というのもあるでしょうか。

でも、なかなかそういう「行動」をしてくれなかったりもします。
しかし、実際は「問題のある行動」を24時間365日やっているイヌなんかいません。
「問題のない行動」つまり、「正解となる行動」をしているときが、必ずあります。
つまり、実はすでに「できているとき」が、どこかにあるはずなんです。

「家の中で落ち着きがない」などの問題に関する、「実はイヌができている(正解)行動」は、「寝る」でした。
だから「寝ているところを起こす=褒める」わけです。

あなたのイヌにも、必ず「できること」「できていること」があります
まずは、それを探します。
絶対どこかにあります。
なかったらまず一緒に暮らせません。
24時間問題を起こし続けているということですからね。

この「できるを見つける」「見つけたできるを増やす、伸ばす」が、実はしつけやトレーニングの本質です。
すべてのしつけ、トレーニング、問題行動の改善の基本に置くべき考え方です。
ですから、是非とも愛犬の「できる」を見つけていただければと思います。
絶対どこかにありますから。

さて、前回のエントリの最後にこんなことを書きました。

イヌが寝ていたら、起こしにいってみてください。
そのうち、寝ている時間がどんどん増えていきます。
ほんとですよ。
え?起こした後に暴れたら?
どうしましょうか。
もちろん、対策はあります。

この「対策」について、全然触れていませんね。
飼い主さんにしてみれば「イヌのできるを増やす」ってのはわかっても、褒めたらまた問題が起こるじゃんよ!ってこともあるかと思います。

そうなんですよね。
ほなどうしたらええのか?

次に考えるのは「飼い主さんの“できる”なんです。

続きます

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hit1678 について

1978年9月17日生まれ。♂ Dog Life Design ocean style代表。 行動学(行動分析学)に基づいた、イヌの問題行動の改善が専門。 高校卒業後、警察犬訓練士に師事。その後、家庭犬の訓練に従事する。 現在は、問題行動の改善をメインとしつつ、しつけ、トレーニングではなく、「ヒトとイヌの暮らし」を支える「Dog Life Design」というコンセプトで、京阪神をメインに訪問セッションやセミナー講師を務める。 現在、立命館大学大学院応用人間科学研究科応用人間科学専攻(対人援助学領域)に通う社会人大学院生。
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