あなたのイヌが吠える理由 4 イヌの“気持ち”を考える

「イヌの気持ちを考える」と題して、「散歩中、他犬に出会うと吠えるイヌ」の「気持ち」を、“科学的に”考えてみましょうというのが、前回までのエントリでした。

今回も、また別のイヌの気持ちを考えてみようと思います。
前回までのエントリに登場していたイヌは、「他犬を遠ざけたい」という気持ちなんじゃないかな?というお話でしたが、今回のエントリに登場する子は、それとはまた違う“気持ち”で、他のイヌに吠えているようです。
イヌが吠えるのにも、色んな理由があるんですね。
さて、それはどんな“気持ち”なんでしょうか。
では、スタートです。

今回の子もまた、以前ご相談に乗っていた子です。
この「散歩中、他犬に吠える」ということを考えるときに、必ず思い出す子です。

飼い主さんの話によれば、この子もやはり「散歩中に他犬に出会うと激しく吠える」ということでした。
そしてこの飼い主さんは、すでにトレーナーさんについて指導をしてもらっていました。
最初はしつけ教室に通い始め、その後家までトレーナーさんに出張してもらう、プライベートレッスン(訪問レッスン)に切り替えられたとのことです。
ところが、それでもあまり効果はあがっていないということで、うちにご相談に来られました。

「他犬に吠える」という行動に対しては、ざっくりといえば以下の対応をとることが多いです。

 ・他犬に馴れさせていく
 ・他犬と、その子にとっての「いいもの」(食べ物であることが多い)を結びづけていく

上の2つを基本的な戦略として、あとはその子によって微調整をしていきます。
簡単にいえば「他犬が苦手で、吠える」という問題に対する基本的な対処法です。

こういう場合、行動が起こる流れはこんな感じになっています。

 他犬有 … 吠える … 他犬無

こういう流れで「吠える」という行動が繰り返し起こっているわけですから、「他犬がいなくなる」という結果が、「吠える」という行動を強化しているのだろうという予測が立ちます。
言い換えれば、「他犬を追い払おう、遠ざけよう」とするためにとる「逃避行動」と考えられます。
もっとわかりやすく言えば「他犬に『どっか行って!』と吠えている」ということになるでしょうか。
前回までのエントリに出ていた子も、これと同じですね。

この子も当初は、そうした方向でこの行動を考え、対応を続けてきていました。
まずは「しつけ教室」に通って、いわゆる「社会化」というものを考えていたようでした。
成果は上々で、教室で吠えることはほとんどなくなっていったそうです。
しかし、「教室では側にイヌがいても大丈夫」なのに、「家の近所を散歩中にイヌと会うとダメ」ということが、ずーっと続いてしまい、プライベートレッスンに切り替えられました。
プライベートレッスンでも、基本方針は変えずに、やはり「他犬に馴れさせる」ことを主眼に置きながら、いわゆる基礎トレーニング(横について歩く、アイコンタクトをとる、指示に従って座る、マテをする、呼び戻し…などなど)を、地道に続けていたとのことです。

でも、そうした取り組みを長く続けてきたにもかかわらず、いまいち改善に結びついていない。
こういう場合、どこかに落とし穴があるはずです。
そして、飼い主さんのお話を聞いていたら、ちょっとした違和感を持ちました。

それは、飼い主さんの何気ない一言でした。

 「吠えていた子でも、挨拶できたり、遊べたりするんですよ」

詳しく聞いてみると、「相手のイヌとケンカになってしまうこともあれば、楽しく遊べたりすることもある。それは相手による」とのことでした。

この話を聞いて、思ったわけです。

これは……とんでもない勘違いをしているのかもしれないぞ……

そこで、飼い主さんにあるアドバイスをして、しばらく様子を見てもらいました。
すると、3週間ほどで「他のイヌに吠える」という行動は激減したんです。

お願いしたのは、2つのことでした。

 1 「吠えた相手には、絶対に近づけさせない」
 2 「吠えなかった場合は、必ず挨拶させたり、遊ばせたりする」

これだけで、「他犬に吠える」という問題は、ほとんど解消されたわけです。
なぜ、そんなことになったのか?

次回から、この子の「イヌの気持ち」に、迫ります。

続きます

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hit1678 について

1978年9月17日生まれ。♂ Dog Life Design ocean style代表。 行動学(行動分析学)に基づいた、イヌの問題行動の改善が専門。 高校卒業後、警察犬訓練士に師事。その後、家庭犬の訓練に従事する。 現在は、問題行動の改善をメインとしつつ、しつけ、トレーニングではなく、「ヒトとイヌの暮らし」を支える「Dog Life Design」というコンセプトで、京阪神をメインに訪問セッションやセミナー講師を務める。 現在、立命館大学大学院応用人間科学研究科応用人間科学専攻(対人援助学領域)に通う社会人大学院生。
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