あなたのイヌが、吠える理由 3  イヌの“気持ち”を考える

「散歩中に出会うと他のイヌに吠える」という行動をする「犬の気持ち」を考えてみようというシリーズです。

「犬の気持ち」「犬の心」「犬の心理」というものを、犬の頭とか脳とか体の内部から取り出して見ることはできません。
なにせ「こころ」というものは、実体がないものですから。

かといって、ただひたすら「観察」しているだけでも、やっぱりわかりません。
どうしても、「そうなんじゃないかなー?」という想像の域を出ないことになります。
じゃあってことで、「確認する」作業が必要になります。

「他のイヌを追い払っているように見える」という行動を見て、「警戒心が強い」という風に考えた飼い主さん。
しかし、「実際に他のイヌを追い払っているかどうか」を、今度は「確認する」必要があります。

そこで、ちょっと頭を働かせて、このように考えてみます。

「吠える」という行動が、「他のイヌを追い払っている行動」ということは、「吠える」という行動の「目的」は、「他のイヌを遠ざける」というものになります。
言い換えれば、このイヌは「他のイヌを遠ざけるために、吠えている」ということになります。

てことは?

たとえば、こんなことを考えてみてください。
あなたは来週の土曜日に、東京駅に向かうことが決まりました。
別に何時に着いても構いません。
交通手段も問いません。
とにかく「来週の土曜日」中に、東京駅に到着していればいいとします。
さて、何で向かいますか?

このブログを読んでいるあなたがどこにお住まいなのかわからないのですが、おそらく人それぞれの「手段」でもって、東京駅に行くことになると思います。
東京からとても遠いところに住んでいる方は、きっと飛行機に乗って、羽田や成田から電車で向かったりするでしょうね。
あるいは、都内や東京近郊に住んでいる方は、メトロやJRなどの電車、もしくはバス、あるいは徒歩や自転車、自分の車で行くという人もいるでしょう。
ひょっとしたら、夜行バスに乗っていくという人もいるかもしれません。
とにかく「東京駅に着けばいい」わけですから、そのための「手段」はなんだっていいわけです。

はい、この考え方を「他のイヌに吠える」という行動にもあてはめて考えます。

「他のイヌを遠ざけるために、吠えている」

すなわち、「吠える」という行動の「目的」は、「他のイヌを遠ざける」ということになります。
ということは、結果的に「他のイヌが遠ざかる」のであれば、別に「吠える」以外の行動でもよいわけです。
しかし、それを「言葉」で伝えても、イヌにはわかりません。
でも、それを何度も「経験」したら、どうでしょうか?

たとえば、「飼い主の横について歩いていたら、他のイヌがどこかへ行った」ということを、何度も経験したらどうでしょう?
たとえば、「飼い主の顔を見ていたら、他のイヌがどこかへ行った」ということを、何度も経験したらどうでしょう?
たとえば、「飼い主の足元で座っていたら、他のイヌがどこかへ行った」ということを、何度も経験したらどうでしょう?


目的:来週の土曜日に東京駅へ行く
手段:飛行機、新幹線、電車、車、自転車、徒歩などなど

目的:他のイヌを遠ざける
手段:吠える、歩く、オスワリする、飼い主の顔を見るなどなど


さてさて、段々と見えてきませんか?

たとえば、あなたの目の前に「東京駅には、夜行バスでしか行けない」と「思い込んでいる」人がいるとします。
実際にはそんな人はなかなかいないと思いますが、仮にそういう人がいるとしてください。
何故そんな風に思い込んでしまったのかはわかりませんが、とにかくそう「思って」います。
ですから、その人はどこに住んでいようが「東京駅には夜行バスで行く」という「行動」しか取れません。
都内に住んでいても、なぜか一旦東京を離れてから、夜行バスで東京駅に向かってしまったりもします。
ものすごく効率悪いですよね。

ところがある日、その人がたまたま別の用事で電車に乗っているときに、なんと「東京駅」に着いてしまうことがありました。
またまた別の日にも、同じように電車に乗っていたら「東京駅」に着いてしまいました。
さらにまた別の日、今度はメトロに乗っていたら、また「東京駅」に着いてしまいました。
夜行バスに乗るよりも、断然早いし、楽だし、お金も全然かからないというメリットがあります。
さて、この人はそれでもなお、「夜行バスに乗る」という行動を繰り返すでしょうか?
きっと繰り返さないですよね。

それと同じ「考え方」を、「イヌの行動」にも当てはめてみるわけです。
「他のイヌを遠ざけるために」吠えているのだとしたら、「吠える以外の、しかもよりメリットの大きな違う行動」を、「他のイヌが立ち去っていくタイミング」で何度もさせることができれば、きっと「吠える」という行動は段々と減っていくはずです。
ちょっと難しいでしょうか?

ここで言いたいのは、つまりこういうことです。

「仮に、他のイヌを遠ざけるために吠えているのだとしたら、
 どんな行動であれ結果的に遠ざかればいいわけで、
 他のイヌが遠ざかっていくタイミングで違う行動をさせていけば、
 自然と吠える行動はなくなっていくはず」

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そして、この「吠えるという行動が減っていく」ということが起こってはじめて、「吠える目的=他のイヌを遠ざけるため」ということが「確認できた」ということになります。

つまり、ただ見る、観察するわけでもなく、ボディーランゲージを読むわけでもなく、会話しちゃうわけでもなく、丁寧に行動の変化を読み取りながら、「確認していく」わけですね。
これが、「科学的に」気持ちを考えてみるということの、一つの例です。


※割と大切な補足
おそらく、「他のイヌに吠える」という悩みを持っていらっしゃる場合、「他のイヌが立ち去るタイミングで別の行動を引き出すとかでけへんのじゃおら」という方が多いのではないかと思います。
「他のイヌがおったらもう全然言うこと聞かへんから悩んでるんであってやね……どうしたらええんかそこを教えたらんかい」という方も多いでしょう。
ごもっともでございます。

ただ、ただです。
この「他の行動を引き出す」というのは、色ーんなテクニックを駆使したりしながらやっていくんですね。
実際は、あんなグラフのようにきれいに反応が変わらないこともあります。
そこで大切になってくるのが、いわゆる「その子に合った方法」ということになります。
どうすれば、その「別の行動を引き出せるのか?」を、トレーナーが知恵を絞って、考えるわけですね。
とにかく今日のところは、「犬の気持ち」というテーマでのお話であるということで、ご理解いただければと思います。

実際のセッションなんかは、こんな風に「吠えちゃダメ」と教えるのではなく、「吠えなくても別の方法がありますよ」と、イヌに伝えていくというやり方をとっています。
これは「他犬に吠える」という問題に限らず、すべてのしつけ、問題行動の改善に共通しています。
「~しちゃダメ」っていうのはねぇ、イヌも飼い主さんもしんどいですから。
もしこういうやり方に興味を持っていただけた場合は、一度ご連絡くださればと思います。

※もうひとつ補足
セミナーなどでこういう題材でお話をしているものですから、どうも「しっかり記録をとりなさい!」と、「ものすごくきっちりビシバシやる人」みたいなイメージがあるらしいんですが、実際はそうでもないですからね。
確かに記録をとってもらうこともありますが、そうでもないこともあります。
その辺は、臨機応変にゆるくやっておりますので。

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hit1678 について

1978年9月17日生まれ。♂ Dog Life Design ocean style代表。 行動学(行動分析学)に基づいた、イヌの問題行動の改善が専門。 高校卒業後、警察犬訓練士に師事。その後、家庭犬の訓練に従事する。 現在は、問題行動の改善をメインとしつつ、しつけ、トレーニングではなく、「ヒトとイヌの暮らし」を支える「Dog Life Design」というコンセプトで、京阪神をメインに訪問セッションやセミナー講師を務める。 現在、立命館大学大学院応用人間科学研究科応用人間科学専攻(対人援助学領域)に通う社会人大学院生。
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