あなたのイヌが、吠える理由  イヌの“気持ち”を考える

散歩中に他の犬に吠えてしまう子は、結構多いですよね。
寄せられるご相談の中での割合としても多い方です。
じゃあ、どうして吠えるのか?
その「行動の理由」を“科学的”に考えてみようと思います。

ではまずは、散歩中に他犬に吠えてしまうことが悩みの飼い主さんに、ご登場願いましょう。
以下のやり取りは、実際にあったケースをモデルに構成しています。
カウンセリングに伺ったときは、大体こんな感じで色々とお話を聞いています。

-他のイヌと出会うと、必ず吠えるわけですか?
飼 はい、もう必ずですね。
-これまでは、どんな対応を?
飼 色々です。吠えたら「ダメ!」って叱ってみたり、リードを強く引いたり、口を掴んでみたり。あとは、水鉄砲がいいとか聞いたので…
-水鉄砲ですか?
飼 はい。天罰とかいうんですか?あれで、やってみて。
-効果ありました?
飼 まったく(笑)
-他にはどんなことを?
飼 オスワリをさせてみたりもしてるんですけど、ほとんど聞かないです。結局は、引きずって逃げるだけになってますね。
-もう、全然声は届かない感じですか?
飼 届かないですね。すごい興奮してしまって。警戒心が強すぎるんでしょうか?
-そうかもしれないですね。過去に他のわんちゃんとケンカになったりとか、追いかけられたとかの経験はありますか?
飼 いやー、なかったと思います。
-反対に、遊べたり、あいさつできたりすることはありますか?
飼 昔から知ってる子とか、兄弟犬と母犬が近所にいるんですけど、その子達は大丈夫です。でも、よく知らない子とか、散歩で会うだけの子とかは、まったくダメですね。近寄ってきたら、噛みつきそうで。
-オスワリをさせようとしても、ほとんど聞かないってことは、時々は聞くんでしょうか?
飼 相手の子が遠くにいて、こっちを全然気にしてなければ、なんとか。あ、オヤツを見せながらですけど
-オヤツを見せながらなら、なんとか座れるんですね。
飼 はい。でも、近づいてきたら、すぐに立ち上がって、オヤツのことは目に入らなくなるみたいです。
-なるほど

…以下省略

飼い主さんのお話を総合すると、次のようになりました。
それぞれに、僕なりの見解も交えながら書いていきます。

・子犬の頃は吠えていなかった。でも、いつの間にか吠えるようになった。

子犬の頃はまったく吠えていなかったのに、いつの頃からか他犬に対して吠えるようになってしまったというケースは結構あります。
個人的な経験での話にはなりますが、どうも生後8か月前後から、段々と「他犬に吠えるようになる」ということがあるようです。
つまり、子犬の頃は仲良くできていたとしても、将来吠える子になる可能性はあるということですね。

・他犬が遠くにいる場合は、コマンドが届くことがある。

相手のイヌとの距離によって、「吠える/吠えない」ということが分かれる場合も結構あります(個人的に射程距離と呼んでます)。
5m程度の子もいれば、どんなに離れていても姿が見えたら吠えるという子もいます。

・対応としては、基本的に「ダメ!」と言ったりしながら、引きずって逃げている。

やはり「叱る」「怒る」という対応をされる方が多いようですね。
また、チェーンカラー(チョークチェーン)などの道具を、ペットショップなどで購入してつけている方も多いようです。
ただし、それが「使えている」わけではないことがほとんどです。
チェーンカラーって、結構使い方が難しいですからね。

・散歩中は、ほとんど横について歩いてくれることはない。

「他犬に吠える子」は、大体「引っ張り癖」というものもセットでついてきます。
飼い主よりも前を歩いていることが多く、結果的に飼い主より先に他犬を見つけて、そのまま吠えることになってしまうと。

とまあ、このような形で、材料が集まってきました。
さて、ここから「科学的に」考えていきます。
「科学的に」ですから、まずは数値化して考えます。
「数値化」といってもそんなに難しい話ではありません。
要は「数える」ということ。
これが、後々に効いてくるんです。

そんなわけで、飼い主さんには以下のことをお願いすることになります。

・出会った頭数、そして吠えた回数をとにかく数える

最初は、特に何かをするわけではありません。
まずは、「現状、どの程度の割合で吠えているのか?」を把握するところから始めます。
期間は、大体1~2週間程度(場合によってはもうちょっと伸びることもあります)。
※ただし、「そんな悠長に数えてられません」という場合も多々ある(というかそういう場合がほとんど)ので、もう最初からアドバイスをして、スタートすることの方が多いです。
そんなわけで、記録をとってもらったところ、以下のような結果が出ました(実際にあったデータを改変しています)。

1日目 出会った頭数 3頭  吠えた回数 3回
2日目 出会った頭数 4頭  吠えた回数 4回
3日目 出会った頭数 3頭  吠えた回数 3回
4日目 出会った頭数 2頭  吠えた回数 2回
5日目 出会った頭数 5頭  吠えた回数 4回
6日目 出会った頭数 3頭  吠えた回数 3回
7日目 出会った頭数 8頭  吠えた回数 6回
8日目 出会った頭数 3頭  吠えた回数 3回
9日目 出会った頭数 0頭  吠えた回数 0回 雨のため散歩に行かず
10日目 出会った頭数 7頭  吠えた回数 6回
11日目 出会った頭数 3頭  吠えた回数 3回
12日目 出会った頭数 4頭  吠えた回数 4回
13日目 出会った頭数 3頭  吠えた回数 3回
14日目 出会った頭数 2頭  吠えた回数 2回

以上のことから、大体平均して1日で3.8頭と出会い、95.4%の割合で吠えていることがわかります。
グラフにすると、こんな感じ(縦軸の最低の数値は70%になっています)。
まあ、ほぼ100%吠えるわけですね。

bark-train1

さて、次は「仮説」を立てていきます。
この飼い主さんはこんなことをおっしゃっていました。

「警戒心が強すぎるんでしょうか?」

「警戒“心”」と、「」が出てきましたね。
さてさて、どうなんでしょうか?

続きます

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hit1678 について

1978年9月17日生まれ。♂ Dog Life Design ocean style代表。 行動学(行動分析学)に基づいた、イヌの問題行動の改善が専門。 高校卒業後、警察犬訓練士に師事。その後、家庭犬の訓練に従事する。 現在は、問題行動の改善をメインとしつつ、しつけ、トレーニングではなく、「ヒトとイヌの暮らし」を支える「Dog Life Design」というコンセプトで、京阪神をメインに訪問セッションやセミナー講師を務める。 現在、立命館大学大学院応用人間科学研究科応用人間科学専攻(対人援助学領域)に通う社会人大学院生。
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